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神戸家庭裁判所姫路支部 昭和36年(家イ)7号 命令 1961年8月17日

申立人 板垣しづ子(仮名)

相手方 板垣太郎(仮名)

主文

相手方板垣太郎が○○重工業株式会社(造船工作部工務課所属)を退職した事により支給せられる退職金の授受に関して利害関係人○○重工業株式会社は本件調停手続終了に至るまで上記退職金の支払をしてはならない。

相手方板垣太郎は本件調停手続終了に至るまで、上記退職金を受領してはならない。

相手方においてこの措置に従わないときは家事審判法第二八条により五、〇〇〇円以下の過料に処せられる。

(家事審判官 中川文彦)

事件の経過

(調停の経過と調停前仮処分を必要とする理由)

申立人は表面離婚を請求しているが、真意は相手方が態度を改めるなら離婚請求を取下げてもよいというにあつた。

調停開始当初相手方は調停をボイコットし調停が全く進展しなかつたので調査官による出頭勧告がなされたがこれが契機となつて相手方は生活態度を若干改める行があつたので、申立人の申出もあり調停は一時事実上中止となつた。而し問題の根本的解決に至らないまま七月に至つて相手方は再び調停申立時に復し更に妻たる申立人に相談もなく勤務先を退職それと前後して特定の女性関係がある事が判明するに及び申立人はもはや離婚を決意せざるを得ない心境に立至つている。

相手方は資質収入が殆んどなく退職金が唯一の資産であるが、その退職金も近日中に交付される見込で本件調停の成立の場合その実効をあげる為には本件調停成立まで相手方に退職金が交付されない様に図る必要があるものである。

よつて仮の措置をとつたものである。

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